野狐消暇録

所感を記す

読書

カフカ再読「判決」

一回目の読書 ふと思い立ち、カフカの「判決」を再読した。以前に読んだときは、一旗揚げようと外国に行き、全く仕事がうまくいかないのに、見栄だったり意地だったりで意固地になって国帰って来ない友人と、両親の店を継いで仕事も順調、結婚も決まって、「…

『吾輩は猫である』の思い出

初めて読んだのは、高校生だったと思う。面白くて、最後まで読み通してしまった。読んでいるとき面白かったし、当時、本を読むのを途中で止めるということをあまりしなかったので読み通したが、人によっては途中で読むのを止める人もいるようである。それを…

岩本素白「雨の宿」を解釈しつつ読む。

岩本素白の随筆を読み返している。すでに著作権の期間が切れているらしく、青空文庫で読める。文章は漢字仮名交じりの、少し昔の文章である。 ひどいというほどでもないが、国文学の先生らしく、一文がやや長い。これが読みづらく、意味を取りづらいので、自…

ドリトル先生はSFである。

原書の『ドリトル先生 アフリカ行き』を読み終わった まず、めでたい。読み終わるとは思っていなかった。何しろ、英語の本を最後まで読み切ったことが、生まれてこの方一度もなかったのである。この喜びを誰に伝えようかと思って、母に電話してしまったくら…

「伊豆の踊子」を読んだ。

有名な小説なので、読もうとして読みかけた事は確かあったと思うのだが、何も惹かれるところがなく、途中で読むのを止めたか、飛ばし読みして終わりにしてしまっていた。今回、眠れない夜の友として、Kindleで岩波文庫の『伊豆の踊子』を買い、読んでみた。 …

『フェルマーの最終定理』(新潮文庫)を読んだ。

ドキュメンタリー番組の方を観たことがあって、この書籍版は後から読んだ。だから、内容はある程度知っていたわけだが、それでも面白かった。人の話でも、何度聞いても面白く聞けてしまうという事がたまにあるが、この話もそれに類する話らしい。映画でいう…

『メグレと老外交官の死』を読んだ感想

メグレ警視シリーズは大好きである。出会ったのは、自分がまだ二十歳頃だったろう。自分は、ちょっと草臥れた、それでいて犯人を捕まえる名警視であるメグレが好きだった。メグレは奥さんを愛していて、二人で仲睦まじく暮らしていたが、その様子は華やかな…

『ほんとうの憲法 戦後憲法学批判』(篠田英朗)を読んだ。

全部理解できた訳ではないが、積年の謎が解けた所がある。 この本で解けた疑問は以下の通り。 Q. 憲法論議の前提が不自然なのはなぜか? 憲法をめぐる議論が、なぜ どういう憲法が望ましいか という論点を離れて 憲法を守るべきである 憲法を守らないと戦争…

『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』を読みました。

この本の主張は3つある。そのうち2つは、サブタイトル「ベーシックインカムと一日三時間労働」にあるように、最低所得保障と余暇の大幅な拡充である。もうひとつは国境の開放により、人の移動の自由を実現する事である。 以下、簡単にまとめてみる。 ① ユニ…

『指導者とは』(リチャード・ニクソン著)を読んだ。

この本は、アメリカの元大統領ニクソン氏が、自ら知る世界中の指導者について記した本である。原題は、『Leaders』というらしい。 ニクソンは共和党だったから、所謂保守派に属する。取り上げた指導者も然りで、保守派が多いように見受けられる。我が日本か…

『アデナウアー - 現代ドイツを創った政治家』 (中公新書) を読んだ。

筆者も書いているように、吉田茂を想起させる政治家だ。 外交家で、ヨーロッパを志向した。戦後の礎を築いた政治家。 そうしたアデナウアーの特徴は、僕の中にある吉田茂の戦後政治のイメージと重なり合う。 ドイツでは有名な政治家だそうだが、自分は不勉強…

蝉丸

蝉丸は、後撰集にて、以下の歌を詠んだ。 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂(あふさか)の関 この歌は聞いた事があったが、歌に込められた意味は知らなかった。 今日、自分は能を観てきた。 蝉丸という能である。蝉丸は、盲目である。…

『休戦』を読んで

『休戦』はプリーモ・レーヴィというイタリアのユダヤ人が書いた作品である。これはドキュメントであって、創作ではないが、文学的な効果を狙っているから、ただの記録ではない。 本書は、かの悪名高いアウシュビッツ強制収容所に入れられた著者がそこを生き…

鴎外作「護持院原の敵討」を読む

この作品を以前読んだ時、特に気になったのが、宇平であった。 宇平は敵討ちの旅の途中で、自分は敵に会えるかどうか分からないまま、このような旅を続けるのは止すと言って、姿を晦ましてしまう。宇平がいなくなってすぐ、敵の居場所が分かり、敵討ちは果た…

文学作品に出てくる子供 -「銀河鉄道の夜」から-

文学の中の子供で気に入っているのは、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」に出てくるジョバンニである。 ジョバンニはザネリにからかわれた時に、「ザネリがあんな事言うのは、ザネリが馬鹿だからだ」と考える。言わば心の中で意趣返しをするのだが、実に良く子…