野狐消暇録

所感を記す

商才

妻は今日行くはずだったところの約束を、急に前日、取りやめたのである。

その断りの電話を僕が妻に変わって入れたのである。

「ちょっと用ができてしまって行けなくなってしまったんです。延期できませんか」

相手もまぁあることなのだろうとは思う。日程を調整して、1か月後にまた伺うことに決まったのである。

だから、この話は特に誰が被害を受けたということはない。当日約束の時刻に妻が現れず、相手が困惑したというわけではない。

だが、俺は思うのだ。

妻が今日、約束を違えたのは他でもない、自分の商売の売り上げのことなのだ。今日は、どうも客が集まりそうだということが前日に分かり、それで相手との約束を取りやめて、商売に打ち込むことに決めたのである。

なるほど、売り上げを上げるには、機会を捉えることが大切なのだろう、自分にも想像できることではある。

しかし。

自分なら、最初に入っていた約束を取るけどなぁ。

そのあたりの貪欲さが、彼我の商才の差であろうか。