観覧車に乗ったら、ロマンチックな気持ちになるのではないか、と妻は考えていたそうである。実のところ、自分もロマンチックとまではいかないでも、観覧車は楽しい乗り物だと思っていた。
それがどうだろうか、乗ってみてすぐに怖くなった。何しろ、観覧車の人が乗る部分は、上から吊られているのである。これが怖い。足の下には何の支えもないのだ。妻も怖くなったようで、設置されていたタブレット端末を触って、「これを見ていれば怖くないはず。これを見よう」と、早くも怖さを紛らわせる方法を探してきた。
それでちょっとタブレットを触ったのだが、せっかく乗ったのに勿体ないという気がして、景色を眺めてみた。実際、観覧車というのは、中で何もすることがなくて、外の景色でも見るしかないのだ。しかし、ずっと怖い。
やっと下に降りてくると、心からほっとした。こんなに観覧車が怖いとは思わなかった。妻は「二度と乗らない」と云った。僕も賛成だ。もう乗らなくていいだろう。
こんな怖い乗り物にわざわざお金を払って乗るなんて、どうにも意味が分からないことである。