段々自分がやる事を奥さんが把握してきた。
それで、ある日帰ると、奥さんが抹茶を飲む準備を整えてくれた。
「お茶を飲みたいでしょう」
と彼女は言った。
特にそんな気はなかったが、言われたらやろうかという気になる。
二人で道具を並べる。
菓子は彼女が貰ってきたもの。
丸い菓子は半分自分で食べたそうで、もう半分を僕のために持ち帰ってくれたそうだ。
貰った菓子を全部食べず、旦那さんのために半分持ち帰る。
なんと心温まる事だろうか。
彼女の気持ちは本当に嬉しい事だ。
それで、半分の丸い菓子にあやかって、この茶会を「半月茶会」と名付けた。
菓子を半月に見立てたのである。
このとき飲んだ抹茶はぬるくて、正直飲めたものではなかったが、彼女の心が温かかったから、釣り合いは取れているのである。
さて、半月茶会の数日後、自分は土曜日で休日だった。
柄にもなく掃除などをしていて、ある道具を見つけた。
これはびっくり。
どこかにある気はしていたが、茶入の棗と蓋置である。
しかし、棗はともかく、蓋置まである。
蓋置があるという事は、柄杓もあるかもしれない。
引っ越しのとき、柄杓を布か何かに包んだような気もするが。
今後、お道具がちょっとづつ揃っていく事になったら、ちょっと楽しみである。