野狐消暇録

所感を記す

このはな会秋季茶会

この花会の秋季茶会は、看月庵のお茶会で、護国寺で開かれる。

I先輩がお免状を取るときにお邪魔した気がするが、その時以来かもしれない。

百何周年の記念の茶会だから、学生も席も持ったらどうかと勧められたそうで、文理の茶道研究会が一席、圓成庵に席を設けている。

自分は昔、その茶道研究会に属していた関係で、この茶会にお邪魔したのである。

圓成庵は小間であるが、九人は客が入ると半東さんが言っていたから、それなりに広い。十時に行ってM先輩と二人で入ると、かなり余裕がある。M先輩が色々話すので、わりにリラックスした席になった。軸は確か、紅葉に関する語で、香合は柿の形、水差しは芋の形、主茶碗、替え茶碗はそれぞれ違うデザインだが、共に紅葉をモチーフにしたものであった。つまり秋であるという事がテーマになっている。

この花会のH先生の席にも入れて頂いた。よく考えると自分が正客であった。今思い返すと、半東が「当流は云々」と話していて、かなり流派の中心に近い方なのではないかと思う。本当に何気なく正客になってしまった。出てくるお道具も、いつも通りぐらいの気持ちでいたのだが、宝物と言っておかしくないようなものである事が半東さんの説明で分かった。つまり、人の一生を軽々と超え、何代にも渡って、「茶道の心得がある人」或いは「東洋の美術品を解する人」によって伝えられてきた品という事になる。皇室関係の収蔵品に含まれる作品を作った人の作品もあるらしい。風炉先屏風だったか。大体、風炉先屏風に螺鈿が使われているのを自分は今まで見た事がない。風炉先屏風に螺鈿で紅葉が描かれている。茶箱の点前だったが、その茶箱にも螺鈿で画が描かれていた。ちょっと、美術館でお目にかかってもおかしくはない感じである。なんでも、半東さんが最初に見たときはもっとくすんだ感じで、こんなものと思っていたのだが、道具屋さんに頼んで磨いてもらったのだという。道具屋さん曰く、素人が磨くと傷が付くのでやらない方が良いとのこと。奈良とか聞いた気がするが、まさか奈良時代ではないだろうが、ともかく古いような事であった。

もう一つ、ちょっと面白いというか、自分と不思議な縁のある品物を見た。

それは自分の住んでいる鶴見には総持寺という曹洞宗の本山があるが、この寺が石川県から神奈川に移ってくるとき、和尚さんが縁のある人に、僧衣を分けたのだという。その僧衣をもらい受けた人が、僧衣の一部を切り取り、仕覆に仕立てたというのである。

道元なんとかという名が付いていたと思うが、早くも忘れてしまった。茶会に行ったのは今日なのだけれど。

部長のK君やH先生などにご挨拶して帰る事にする。M先輩は朝仕事をしてからお茶会に来て、終わったらまた仕事らしい。どれだけ忙しいのだろう。そして、その暮らしに比べたら、自分はまだ人間的な余裕が生活にある。有り難いことだと思う。