野狐消暇録

所感を記す

帝国主義思想を捨てる

外国から富を収奪し、その土地の住民を支配するのは、道義的に許されない。太平洋戦争の敗北は軍事的敗北であると同時に、帝国主義思想の敗北である。大日本帝国は、憲法を作り直さねばならなかった。即ち、国の根幹を立て直さねばならなかった。そして帝国であることを止めた。これが大切なことなのである。

帝国は、外国に植民地を持ち、外国から富を収奪する。そうした行いそのものが、すでに許されない。これは現代の中心的な思想である。また、正しい考えである。

日本はTPP11を主導したと言われている。これは外国からの非難を受けていない。それは、参加国が自主的に参加し、そこに何ら武力による脅迫がないからだ。つまり、国際的な枠組みを作ること自体が誤りなのではない。武力による征服が問題なのである。

もうひとつ例を出す。EUは超国家的な政治共同体になっている。しかし、これもまた避難されてはいない。内部に問題は抱えつつも、ウクライナを攻めたロシアのように非難されることはない。それは参加国が自主的に参加しており、強制的に併合されたわけではないからだ。

帝国主義の問題は、外国やその国の民族を差別し、下に見て、収奪しても構わないのだと一方的に考え、抵抗する相手を殺し、征服するのを肯定することにある。

このような思想が現代になお生き残れるはずはない。ロシアも行動だけを見れば帝国主義そのものであるが、表立って帝国を名乗っていない。公称できない主義にのっとって行う振る舞いは、当然に、国際社会で避難の的になっている。

日本は、帝国主義そのものを反省し、帝国主義を否定する態度を明確にすべきだと思う。帝国主義の否定を明確化したうえで、ロシアの振る舞いや、中国の非漢民族への差別的取り扱いを批判し、場合によっては非難すべきである。