中国にいる義弟の幼子のために粉ミルクを送ることになり、ラゾーナ川崎に来た。アカチャンホンポで買い物は終わって、粉ミルクの缶を詰めたキャリーケースを引きながら、資生堂の喫茶店に来た。通りかかっては、外に見えるように出してあるメニューを見、なんて高いパフェなんだと思ってそのまま通り過ぎていたのだが、今日、意を決して入店することにした。
店内はやや閑散としていたが、客がいないわけではない。テーブルとテーブルの間にゆったりとしたスペースがあるため、混雑がないのだ。
案内された席は部屋の角で、テーブルは楕円形であった。
妻はパスタとスープ、ミニパフェのセットを頼んだ。自分は苺のパフェにした。
昔はパフェ一つの値段で、外食が3回ぐらいできると思い、とても頼めなかったが、今日遂に頼んだ。
妻のスープが先に来た。
オニオンスープだ。出汁といっていいのか、深みのある味だ。
自分のパフェも来た。
苺が旨い。生クリームも優しい味わいだ。そうか、苺まで旨いのか。
食事の前に、わざわざスプーンとフォークを並べてくれる。その後に食事が配膳されるのである。
給仕は皆女性で、黒い制服を身に纏い、腰には白いエプロンを巻いていた。喉が渇いていて、コップに注がれた水を飲んでいたら、何度も水を注いでくれる。落ち着いた態度であった。
パスタが届いた。
美味しいが普通だ。パスタ屋ではないし、まぁいい。
妻にもミニパフェが届いたが、生理なのでアイスクリームを食べたくないと云う。代わりに自分がアイスだけ食べる。
店内の内装は白を基調にしていた。豪華さも少しあり、また少し童話的でもあるような、清潔さを感じさせるものであった。
また、クラシック音楽が流れていた。
自分は、ただ食事をしただけでない価値をこの店に感じた。これを何というべきか。
食べ終わって席を立とうかと云う頃、妻に言った。
「この店に来て思ったんだが、向日葵の種の殻が床に散らばっているところで飯を食っている場合ではないな」
「大きな声を出さないで。周りに聞こえる」
妻は私を窘めた。
お土産に、レジの横にあったクッキーとレトルトカレーを買い、店を出た。
外は雨であった。傘を差して歩道を歩きながら、お店が良かった話を妻にした。
「クラシック音楽が流れて、内装が綺麗で、テーブルの間を広く取っていて、食事だけじゃない良さがあるね」
「品がある」
と、妻が応じた。
ああ、そうだ。自分はその事が言いたかったのだ。
「そうだ。上品だな。その通りだ」