観雀堂日録

炎天下 痩せた雀が 低く飛ぶ

芦ノ湖で白鳥ボートに乗る

芦ノ湖(あしのこ)に浮かぶのは遊覧船だけではない。小さな足漕ぎ式の白鳥ボートもまた浮かんでいる。

妻がお金を払ったようで、私は桟橋に来た。ズンスアとフさん、それに自分の三人で乗るようだ。

このボートには以前も乗ったことがある。その時は妻の御両親と一緒に乗ったのであったが、風が強く、ポートの揺れに危機感を抱いた御両親は焦った。妻へ連絡して通訳を頼み、僕は妻からの連絡を通して、両親が岸に戻りたがっていると知った。それで岸に帰ったのであった。

さて、子供を真ん中にしたら良いという店員の助言に従い、真ん中にズンスアを乗せた。僕とフさんは両脇に乗り、一緒になってボートを漕ぐのだ。

岸からほど近い湖面に鳥居があり、観光名所になっている。ボートはズンスアの運転でそちらに向かって進む。

店員に桟橋で「鳥居には近づかないように」と釘を刺されていたので、ある程度寄ったところでズンスアを止め、ボートは僕がハンドルを回したことにより旋回した。

あっちへ行ったり、こっちへ行ったりした。のんびり湖に浮かぶように見える白鳥ボートも、実際に乗ると足がすぐに疲れてしまった。

自転車の競技にでも出たかのようだ。

「30分で帰って来い。時刻を過ぎたら超過料金があるぞ」と店員に言われていたので、いや、そんな言い方ではなかったと思うが、言い方はともかくそういう内容の話があったから、そろそろ戻るべしと思った。

始めにボートに乗った桟橋に戻ろうとすると、戻る場所が分からない。なるほど、飛行機は離陸と着陸が難しいと聞くが、船の操縦も同じかもしれない。果たして無事に着岸できるか。

六番、六番、六番の桟橋。心に呟きながら、目を凝らすが番号の標識が遠くて見えない。

とりあえず桟橋が伸びる辺りに近づいてみることにする。近づくと、出発する他の白鳥ボートなどがあり、桟橋付近は混雑している。このボートにぶつかってもいけないから、相手の動きや向きを見ながら白鳥ボートを避ける。

目的の桟橋が分かった。

「リゥ、リゥだ。イーアゥサンスーウゥリゥ!」

ズンスアに大声で言い、手の指で六を示しながら、自分も時々手を出して、ハンドルを操作する。

自分はまた、手を目的の桟橋に向けて伸ばし、ズンスアに方向を指し示す。

相当程度接近したところで、桟橋の上から、店員が反対側に回れと合図をする。

ズンスアに手でぐるぐると桟橋を回って反対に出るコースを示す。

そして遂にポートは桟橋に横付けされた。我々はやり遂げた。ズンスアに手でサムズアップ👍️を作って見せると、ズンスアはこちらを振り返り、ぷっくりと太った顔で嬉しそうに笑った。