箱根は火山であり、温泉が湧いている。せっかくだから、温泉に入りたい。泊まったのは一軒家で、温泉は付いていなかったから、外に入りに行くしかない。調べると、手ぶらで行ける温泉があったのでそこに行くことにした。
箱根登山鉄道に乗り、山を下る。芦ノ湖の宿から箱根湯本に下るのである。
箱根湯本駅にやっと着いた。遊覧船に乗ったり、黒たまごを食べたりしていたのでもう夕方である。駅から歩いて温泉街に向かう。
橋を渡り、川岸を歩いていく。
ホテルが見えてくる。我々は泊まらないが、ここの風呂に入るのだ。
二階のレストランで腹拵えをしたあと、風呂に向かう。脱衣所で服を脱いだあと、風呂がどこにあるのか分からなくて迷ったが、気づけばそこしかないところにちゃんとあった。手ぬぐい一つを手に風呂に入る。
まずは体を洗って一番そばにあったお風呂に足から入り、ここでゆっくりする。熱いが辛いほどではなく、ちゃんと自分にも入れた。
他にもお風呂がある。一つ先には露天風呂があるので、入りに行く。
露天風呂のお湯はぬるい。これなら部屋の風呂のほうが温かくていいが、何しろ天井がない。露天風呂に浸かって見上げると、山が見える。
山には木々がこんもりと生え、山肌は少しも見えない。峰に生えている木は向こうにもう木がないので、枝の伸び方など、様子が良く分かる。
もし、古代の、何もない頃の日本に生まれても、温泉を見つけて浸かれば、きっとこんな景色だろう。山に生える木々を見ると、古い記憶が蘇るような、懐かしい感じがする。