もう午前零時を過ぎ、日付が変わっていた。
アジのなめろうを注文して食べた。シメのつもりで妻がナポリタンを注文。一体魚屋のナポリタンに期待する人間がどこにいるだろうか。しかし、磯丸水産のナポリタンは旨かった。ナボリタンが来たとき、店員のお姉さんが
「煎餅にしますか?」
と言った。意味が分からなくて、
「えっ?」
と聞き返した。
「煎餅にしますか?」
「せんべい?」
オウム返しに聞くと、お姉さんは眉をひそめ、困った顔をした。
「揚げて煎餅にするんです」
「アジですか?」
「はい」
やっと分かった。アジのなめろうの飾りで付いていた、骨と身が一体になった三枚おろしの真ん中部分、ここを揚げて煎餅にしてくれるというのだ。
「お願いします」
「はい、畏まりました」
僕の頭にはずっと、ナポリタンを鉄板で焼いて、広島焼き風のぺしゃんこ焼きにする図が浮かんでいた。正解はアジの煎餅であった。